《第2の活用は、“髪に優しい水”への評価です》
高齢化社会となり、ヘアカラーをしている人々が増えてきております。これは、おしゃれで、若々しく見える女性でありたいという気持ちの表れといえます。もっとも頻繁に施術されているヘアカラーにおいては過酸化水素を使用していることもあり、システイン酸やカルボニル形成に代表される酸化ダメージを引き起こしております。また、ヘアカラーした髪の毛が水(洗髪)により退色(色落ち、色褪せ)することが知られております。これがヘアカラーの頻度を増やすことになり、経済的および時間的な負担の増大だけではなく、ヘアダメージも増大するため、負の連鎖となっております。ヘアカラー剤による染色性を調べたところ、毛(白)髪の場合と同じではありませんが、同様な着色がケラチンフィルムにおいて見られました(パネル-12)。今後、コルテックス部位を主ターゲットとした永久染毛剤の開発などへの利用が期待できます。
次に、カラーしたケラチンフィルムを用いて、水(蒸留水、イオン交換水、水道水)による退色試験を実施したところ、水道水を使用した時には退色が進むことを見出しました。蒸留水、イオン交換水においも退色はされますが、僅かであります。原因物質を調べたところ、水道水中の塩素ではなく金属イオンでありました。これらの知見から、洗髪時にカラーした毛髪から退色を抑えることができるという観点から、“髪に優しい水”を新たなカテゴリーとして提案しております。ケラチンフィルムではなく、髪の毛を使用した場合でも類似した結果が得られますが、フィルムほど顕著な差は見られませんでした。当然、ヘアカラーした毛髪の色落ちを抑えることができる水の対象者はヘアカラーしている人に限定されます。しかしながら、50 歳代と60 歳代の女性において、ヘアカラー率は80%にも及ぶことが知られております。また、“髪に優しい水”の使用によって、退色が抑えられるようでしたらヘアカラーの回数を減らせ、この施術が引き起こすヘアダメージも抑えられるといった、複数のメリットが期待できます。“髪に優しい水”はミネラルを含んだ“美味しい水”とは異なる組成が要求されますことから、理美容業界、旅館やホテルなどでの需要が期待できます。また、水に含まれるある種の金属イオンはヘアダメージを引き起こす原因であることも言われてきておりますので、ヘアカラーしていない消費者にとってもメリットになるかもしれません。