Q:『上記の“回り道”の回答にある“デバイス”というのはフィルムということですか?』
A:『その通りで、このフィルムを“ケラチンフィルム”と呼んでおり、認知度は高まってきております。背景として、毛髪からのタンパク質フィルムの形成方法は藤井研究室において独自に開発して、2004年に報告しており、そのひとつを採用しております。(株)資生堂と「知的クラスター事業」と絡めた共同研究で、このケラチンフィルムが紫外線感受性をもち、酸化タンパク質の検出に使えることを明らかとしました。2009年にこの成果をプレス発表しております。思いのほか反響が良かったことが私たちの背中を押してくれました。その頃からケラチンフィルムは“世界初の代替毛髪”となるのでは?今までにない性能を備えたデバイスとなるのでは?と気づかされました。より社会的なニーズに応えた“実用的な毛髪科学”の研究に舵を切りかえております。俗に言われております“死の谷”を乗り越えるための一歩ということです。フィルムの形成技術からプレス発表までには約5年間もあり、“気づき”の大変さを知らされました。』
Q:『もう少し具体的にケラチンフィルムを説明してください』
A:『わかりました。パネル-4にあるように毛髪から信大法でタンパク質を抽出し、自己集合を誘導して作ったのがケラチンフィルムです。白色?薄いベージュ色を帯びており、この微細構造を電子顕微鏡で観察すると、数百ナノメートルの粒子がネットワーク状に結合した像が観察できます。特有のネットワーク構造に加えて毛髪ケラチンと非常に類似したアミノ酸組成をもつことからも、パネル-2で示したコルテックスを具現化しているものと考えております。』