”摩擦と吸着用のデバイス” への適用

 

《第3の活用は、“摩擦と吸着用のデバイス”への適用です》
 洗髪時においてシャンプー類による処理は、汚れの除去だけでなく手触り感や美しさといった要素は重要な評価項目であります。手触り感を評価する場合において、官能試験だけではなく摩擦力測定試験などを使っての数値化が実施されてきております。ところが、パネル-5で示したように一本一本の毛髪の太さや表面キューティクルの形状が異なることなどから、百本単位の毛髪を同方向に平面状に固定した毛束を作り、その平均的な摩擦を測定するなどの工夫がなされております。しかしながら、大量の毛髪を均一な平面となるように並べ、類似した摩擦特性をもつ毛束を大量に作製することは困難であります。そこで、ケラチンフィルムの高い堅牢性、微細な三次元ネットワーク構造に加えて、均一な平面形状をもつ特性に注目しました。市販されているシャンプー類のケラチンフィルムへの処理がその摩擦と吸着に与える影響を2013 年から調べはじめたところ、興味深い結果が得られてきておりますので、お知らせします。

 

〈摩擦〉
 最初にケラチンフィルムがシャンプー処理に耐えられ、処理前後の質量とパネル-4で示したようにその微細形態にほとんど影響しないことを確認しております。次に市販シャンプー類で処理した後に摩擦を計測したところ、シャンプー単独での処理ではMIU(平均摩擦係数)の変化は僅かしかありませんが、コンディショナー単独とシャンプー + コンディショナーの2重処理により有意に低下しました。これは手触り感が良くなることを簡便に測定しているものと推定しております。MIU 値が低下することは、ケラチンフィルム表面に何かが吸着/結合していることが推定しているため、ここではEDS を使って調べてみました。

 

パネル-14:シャンプー類-摩擦

 

〈吸着〉
多くの市販シャンプー類にシリコーンが加えられているため、この吸着の有無を調べてみました。処理はパネル-14と同様に行っております。これは、摩擦測定後のケラチンフィルムを分析/観察用にも使用することができるという有利なことがあります。結果は、ケラチンフィルムでのSi はS(イオウ)と同様にほぼ均一に分布していることがわかりました。つまり、Si に由来するピークは洗い残しなどによる見かけ上のシグナルではないことを示しております。また市販製品により異なるこがわかりました。これらのことから、ケラチンフィルムは吸着/結合のデバイスとしても使用することが示唆されました。

 

パネル-15:シャンプー類-吸着

 

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