繊維学部 機械・ロボット学科 バイオエンジニアリングコース
大学院 総合理工学研究科 生命医工学専攻(修士課程)
大学院 総合医理工学研究科 生命医工学専攻(博士課程)
生命を科学するということは,人間を含む生物の仕組みを理解し,病気の診断や治療方法の開発を行うだけでなく,工学,生物学,医学や心理学など,幅広い学問を融合しなければなりません。生物が持つ性質を,生物固有のものとはみなさず工学的にも実現可能な性質と考えた場合に,その解明の鍵を握っているのは新しい計測技術・加工技術を開発可能な工学系研究者です。特に,センサはそれ自体の重さがわずか数g程度しかなくても数十万円もするものが数多くあり,現代の錬金術とも言われています。
本研究室では,日本の優れた工業技術を生体計測や表面加工に応用し,高付加価値の新しい機器・システムを開発しています。
私達の研究室では,「バイオセンサ」,「バイオミメティクス (生物模倣技術) 」,「プラネタリーヘルス (SDGs)」を研究のキーワードとして,新しい産業の種となる技術を切り開いています。プラネタリーヘルスとは,「気候変動」×「健康」で地球と人間の未来を考えるという概念です。また,生体の優れた機能を模倣することで (バイオミメティクス) ,物質表面へ撥水性や親水性などの新機能を物理的に付与する技術の研究を行っています。
生体センサは,目的物質のみを認識する分子認識素子,認識したという情報を信号に変換する信号変換素子,そして分子認識素子から信号変換素子へ検体を運ぶ流体制御機構から構成され,これらの特性がセンサ性能を左右します。
私たちは,連続計測技術,小型・携帯化技術に取り組むことで他者との差別化を図っており,これらの基盤技術の高度化を目指し,例えば高感度化を可能とする「共振型信号変換技術」や抗体を再生する「レーザー抗体再生法」などの独自技術を開発してきました。
固体表面へ微細な周期構造を付与することで,超撥水性や超親水性を「物理的に」制御する研究を行っています。つまり,生物を規範とした最適構造の同定・設計と人工物への適用です。この効果は,雨滴がハスの葉表面で水玉になる現象で有名です。
いままで,撥水性はフッ素樹脂などの撥水性高分子で「化学的」に付与されてきましたが,剥離等の問題があり長期的な効果は期待できませんでした。本技術は,化石燃料によらないカーボンニュートラルな方法として注目されています。
高度に発達した現代社会において,様々な原因による心身ストレスが社会問題化しています。だ液に含まれる消化酵素の一つであるα-アミラーゼ(唾液アミラーゼ)が,交感神経活動の指標として有望であることに着目し,ドライケミストリ-システムを用いた唾液アミラーゼ活性の迅速分析技術を考案し,測定器として実用化しました。2007年には厚生労働省の医療認可を取得し,2008年にはライフサポート学会の製品賞を受賞しました。
超短パルスレーザーを駆使して物理的に形成した微細周期構造で,新しい物理機能を発現する機能的テクスチャの実現に取り組んでいます。「空間」と「構造」,そして生物を手本とする「情報」に着目したこの融合テクノロジーは,機械系バイオミメティクスと呼ぶことができます。2023年には,企業との共同研究でバイオミメティクスの専用加工機としては世界初となるレーザー加工装置を製品化しました。