【分子レベルで設計する新しい高分子材料】
高校生向けの研究室紹介です.
 
【信州のファーストペンギン】
毎日が、新物質の発見 毎日が、若手の育成
高校生向けの研究室紹介です.

【やさしい科学技術セミナー】
「高分子化学が拓く驚異の高機能材料
 ~プラスチック・繊維・ゴムの最先端~」

高校生向け公開講座です.

高校生,一般の方に向けての研究紹介は,上記の動画をご参照下さい.
特に左上の動画【分子レベルで~】は研究内容から実験の様子までを,簡潔にまとめています.

また,こちらのPDFファイルもご参照下さい

以下は,大学3年生~研究者向けの説明になります.  




官能基を巧みに配置したモノマ/,ポリマーでは,
各官能基単独では発現し得ない特殊効果(官能基シナジー)が現れます.


当研究室では,官能基シナジーを利用した,新しい機能高分子の開発を研究しています.
近年,人工知能 (AI) を用いて効果的な分子設計を行う「マテリアルズ・インフォマティクス」が注目を浴びていますが,
既存材料を学習データに用いているため,既存の分子設計の延長線にある結果が出力されます.

一方,官能基シナジーを用いた当研究室の分子設計は,
機能に応じて官能基や原子団を修飾する,一般的な分子設計戦略とは大きく異なる思想のため,

経験則がアテにならない,"AI超え"の材料創成が期待されます.




官能基シナジーを引き出すためには,
(1) 官能基を効果的に配置したモノマーの設計
(2) 隣接基や立体規則性を制御した重合の設計
(3) 官能基シナジーが引き出す機能の設計

の3つの要素が欠かせません.

当研究室ではこれら各要素に関する過去の知見を集約・再構成し,
3つの要素すべてを考慮した分子戦略による新規な機能性高分子の創成を目指しています.

研究成果については,こちらのPDFもご参照下さい.



ケミカルリサイクルが容易なビニルポリマーの開発(文科省が「日本の強み」と紹介!)


ビニルポリマーは,ラジカル重合により簡単に合成できる高分子です.
しかしながら,これは同時に「簡単に」分解できない高分子を意味します.
実際に,一部の例外を除いて,ビニルポリマーの分解によるモノマー再生(ケミカルリサイクル)が課題になっています.


当研究室では,
ケミカルリサイクルを念頭とした,新しいビニルポリマーを開発しました.
このプラスチックはアスピリンを原料に合成され,水酸化ナトリウム水溶液により直ちにモノマー前駆体に分解します.

 

[関連記事]
Chemical Station(ケムステ)
1. アスピリンから生まれた循環型ビニルポリマー
2. アスピリンから多様な循環型プラスチックを合成
[関連論文]
 
Radical Polymerization of ‘Dehydroaspirin’ with a Formation of Hemiacetal Ester Skeleton: A Hint for Recyclable Vinyl Polymers
A. Kazama, Y. Kohsaka, Polym. Chem. 10, 2764-2768 (2019) (10.1039/C9PY00474B) (Inside Cover).




Diverse chemically recyclable polymers obtained by cationic vinyl and ring-opening polymerizations of the cyclic ketene acetal ester “dehydroaspirin”
A. Kazama, Y. Kohsaka, Polym. Chem. 2022, 13, 6484 - 6491 (Back Cover)




 

共役置換反応を利用した高分子化学

アリル位に脱離基を置換したメタクリル酸エステルは,求核剤と付加-脱離機構に基づく共役置換反応を起こします.
この反応は室温,大気雰囲気でも進行するため,試薬を単に混ぜるだけで実施可能です.
さらに,多様な溶媒や固相でも進行するため,材料化学への応用も期待できます.

当研究室では,共役置換反応を使用し,
新しい重合反応や易分解性高分子の開発を進めています.
 
 
例えば,アリル位にハロゲンを置換したジメタクリレートは,カルボン酸やビスフェノールと容易に縮合して不飽和ポリエステルを与えます.
この不飽和ポリエステルは,アンモニアなどの求核剤によって定量的に分解し,モノマーであるジカルボン酸やビスフェノールを再生します.

このジメタクリレートは,
株式会社ケミクレア様より市販されました!
 

[関連総説]
"Conjugate substitution reaction of α-(substituted methyl)acrylates in polymer chemistry"
Y. Kohsaka, Polym. J. 2020, 52, 1175-1183
(DOI/10.1038/s41428-020-0376-z)

「アリル位を修飾したメタクリル酸エステルの共役置換反応を利用した不飽和ポリエステルの合成と硬化,分解」
高坂泰弘,ネットワークポリマー論文集,42巻2月号,p. 68-74 (2021)




α-機能化アクリレートの高分子化学


上記の共役置換反応のように,α位を置換したアクリル酸エステルは特殊な反応性を示します.
また,主鎖近傍に導入した置換基が,ポリマーの物性大きく変貌させます.
当研究室では,α-機能化アクリル酸エステルの重合化学,機能化学を精力的に研究しています.

〔関連総説〕

"Polymer chemistry of α-substituted acrylates designed for functional-group synergy"
Y. Kohsaka, Y. Akae, R. Kawatani, A. Kazama, J. Macromol. Sci. Part A: Pure and Appl. Chem. 2022, 59, 83–97.
(DOI: 10.1080/10601325.2021.1989311)

 

例えば,α位にアミノ基を置換したアクリル酸エステルは,重合活性なビニル基を有するアミノ酸誘導体として捉えることができます.このモノマーはポリペプチドとは異なるポリアミノ酸類を与えることから,古くから研究者の関心を集めています.

高坂研究室では,側鎖にビニル基を導入した新しいアミノ酸誘導体を合成し,その重合について研究しています.例えば,得られたあるポリマーは強酸・低温でのみ水に溶けるpH/温度応答性を示しました.


[関連論文]
"Effect of Amino Group Modification at Allyl Position of Methacrylamides on Polymerization and Polymer pH-/Thermo-Responsiveness"
Y. Kohsaka, N. Chinbat, K. Ito, Y. Akae, Polym. Chem. in press (DOI:10.1039/D2PY01611G)

"α-(Aminomethyl)acrylate: polymerization and spontaneous post-polymerization modification of β-amino acid ester for a pH/temperature-responsive material "
Y. Kohsaka, Y. Matsumoto, T. Kitayama, Polym. Chem. 6, 5026-5029 (2015).