機能性高分子材料の開発には,(1) モノマー設計(2) 重合設計(3) 機能設計の3つの要素が欠かせませんが,歴史的には重合なら「重合屋」といったように,各要素の専門家がそれぞれの分野を独自に研究・開発していました.当研究室ではこれら各要素に関する過去の知見を集約・再構成し,3つの要素すべてを考慮した分子戦略による新規な機能性高分子の創成を目指しています.

 

高校生,一般の方に向けての研究紹介は,こちらのPDFファイルをご参照下さい

以下は,大学3年生~企業研究者向けの説明になります.


研究の主な対象は,
α-機能化アクリルモノマーです.

アクリル酸エステルは,いわゆる「アクリル樹脂」の原料として広く工業化されていますが,一般的にはエステル置換基に機能団を導入することが定石です(右図中央).エステル置換基の修飾は容易で,モノマーの重合反応性への影響も少ないためでしょう.

これに対し,アクリル酸エステルのα-置換基を機能化した例は非常に稀です.実際,高分子合成化学の黎明期である1950年代~1960年代の研究で,α位に大きな置換基を導入した場合に重合が著しく困難になることが報告されています.このことからも,α-置換基の機能化が現実的なモノマー設計でないことが明らかです.




その一方で,1970年代後半~1990年代までに,α-置換基を機能化したモノマーの一部が,特殊な重合挙動を示すことが相次いで発見されました.これら卓越した先達の研究を参考に,当研究室ではα-機能化アクリルモノマーが
新反応・新機能に繋がる重要な物質であると直感し,研究を進めています.

右の図は,モノマー設計の戦略を説明したものです.
専門的な内容が多いので,詳しい説明は割愛しますが,いずれも簡単な構造の分子であるにも関わらず,従来法では成し得なかった高機能が発現したり,従来重合しないと思われていたモノマーが重合したりと,当該分野の専門家も驚く成果が挙がりつつあります.

それでは,具体的な研究内容について説明します.
下記の研究成果については,こちらのPDFもご参照下さい.


 
   



高坂研究室では重合化学の観点から,生分解性を有する機能性材料の創製を目的とした,新しいモノマーの設計・重合を研究しています.

例えば,右に示すモノマーは,以下の3つの機能団を6員環内に有する,高密度に機能化されたモノマーです.

(1) ラジカル重合やMichael付加に活性なビニル基 
(2) アニオン開環重合や生分解が可能な脂肪族エステル
(3) 酸加水分解やカチオン重合が可能なアセタール

現在,このモノマーの重合について研究を進めています.


[関連論文] 
"α-Exomethylene lactone possessing acetal-ester linkage: Polymerization and postpolymerization modification for water-soluble polymer"
Y. Kohsaka, Y. Matsumoto, T. Zhang, Y. Matsuhashi, T. Kitayama, J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 54, 955-961 (2016).
(Spotlight Article) 


 



重合活性なビニル基を有するアミノ酸誘導体は,ポリペプチドとは異なるポリアミノ酸類を与えることから,古くから研究者の関心を集めています.

高坂研究室では,側鎖にビニル基を導入した新しいアミノ酸誘導体を合成し,その重合について研究しています.例えば,得られたあるポリマーは強酸・低温でのみ水に溶けるpH/温度応答性を示しました.

現在は,ペプチドのように立体規則性が整ったポリマーの合成を目指し,その精密重合について研究を展開しています


[関連論文]
"α-(Aminomethyl)acrylate: polymerization and spontaneous post-polymerization modification of β-amino acid ester for a pH/temperature-responsive material "
Y. Kohsaka, Y. Matsumoto, T. Kitayama, Polym. Chem. 6, 5026-5029 (2015).




 



重縮合では,一般に反応性基を2つ有するモノマーどうしを反応させて高分子を合成します.
これに対し,本研究では
1箇所の反応点での重縮合を達成しました.

右図に示すように,α-(ハロメチル)アクリル酸エステルはジチオールと付加-脱離反応 (SN2'反応)を起こします.このときハロゲン原子Xの脱離に伴い,
アクリロイル基(赤線部分が位置を変えて“再生”します.アクリロイル基はチオールの求核付加(Michael付加)を受容するので,さらに反応が進行してポリスルフィドが得られます.

これは,
異種化学反応を組み合わせた,いわゆるカスケード反応に基づく新しいタイプの重合反です.現在はこの反応を応用した,様々な機能材料の創製を研究しています.未発表部分が多く,その全容はwebでは説明できませんので,興味のある方は直接お問い合わせください.

[関連論文]
"Polymerization of α-(Halomethyl)acrylates through Sequential Nucleophilic Attack of Dithiols using a Combination of Addition–Elimination and Click Reactions"
Y. Kohsaka, K. Hagiwara, K. Ito, Polym. Chem. 8, 976-979 (2017).