Research

高校生の皆さんへ

当研究室の研究内容は、以下の動画でわかりやすく紹介しています。
まずはこちらをご覧下さい。

分子を編み、新しい機能を紡ぐ 
~分子設計が拓く、高分子化学の新地平~

弊研究室では、官能基や原子団の相乗効果を利用した高分子化学を基本戦略に、研究を展開しています。
官能基と機能を1対1の関係で考え、「親水性なら水酸基」といった「足し算の分子設計」ではなく、特殊な官能基配置がもたらす「掛け算の分子設計」で、効率的な高分子機能の創出を目指します。

分子設計と反応開発・機能創出の関連図

研究1|共役置換反応に立脚した高分子化学

共役置換反応は、アリル位に脱離基をもつメタクリル化合物が起こす求核的置換反応で、以下の特徴があります。

  • (堅牢性)室温、大気雰囲気で、溶液中はもちろん、水懸濁系や固相でも実施可能です。
  • (迅速性)適切な触媒の存在下では、溶液中なら数分以内に反応が完結します。
  • (利便性)脱離成分がハロゲン原子の場合、副生成物(塩)は水洗で除去できます。
  • (汎用性)カルボン酸やフェノール、チオール、アミンなど多様な求核剤が適用できます。
  • (制御性)脱離基と求核剤の選択で、可逆/不可逆に反応を制御可能です。
共役置換反応のメカニズムを示す化学反応式

弊研究室では共役置換反応をモノマー開発、反応開発、機能開発に応用する研究を進めています。

(1)モノマー開発:アリル位機能化メタクリルモノマーの合成

共役置換反応を利用すると、様々なアリル位機能化メタクリルモノマーを簡単に合成できます。
特殊な例として、2-(クロロメチル)アクリル酸クロリド ( 1 ) とサリチル酸 ( 2 ) の縮合を行うと、可逆的な共役置換反応が生じて、熱力学的に安定な環状アクリルダイマー3が高収率・高選択的に生成します。3のラジカル重合を行うと、環化重合(渡環重合)が生じて、繰り返し単位に二環式架橋骨格を含むアクリルポリマー 4 が生成します。 4 は、高いガラス転移温度と、優れた溶解性を併せ持つユニークなポリマーです。

アリル位機能化メタクリルモノマーの合成と渡環重合のスキーム

(2)反応開発:不飽和ポリエステルの合成と易分解

アクリル骨格を含む不飽和ポリエステルは熱に弱いため、合成方法が限られます。共役置換反応は室温で進行するため、熱による副反応の懸念がありません.このため、共役置換反応を利用すると、不飽和ポリエステルを容易に合成することが可能です。
共役置換反応はポリマーの分解にも有効です。例えば、上記で得た不飽和ポリエステルにアミンを反応させると、共役置換反応が生じて定量的に主鎖切断します。この反応は溶液中のみならず、固相や水懸濁系でも進行するため、材料分野への応用が期待されている.実際に、既存のポリエステル類に分解点となるアクリル骨格を挿入する技術も開発している。

不飽和ポリエステルの合成および共役置換を利用した分解スキーム

(3)機能開発:高速な応力緩和を誘導する架橋ポリマー(ビトリマー性材料)

架橋高分子では高分子鎖の運動が強く拘束されるため、溶融成形や応力緩和が困難とされてきました.これに対し、最近の研究では、架橋点に交換可能な結合(動的共有結合)を導入すると、網目の組換えが可能になり、応力緩和性や成形性、自己修復性が発現することが明らかになっています。
弊研究室では、共役置換反応に基づく結合交換を利用した架橋アクリルエラストマー(ビトリマー性材料)を開発しています。この架橋エラストマーは類似のアクリル系ビトリマーと比べて桁違いに速い応力緩和を示し、家庭用アイロンでの再成形や、接着シートとしての応用も期待されています。さらに、メタクリルポリマーを主成分とした架橋アクリルガラスなど、ベースポリマーの選択により様々な材料が製造できる点も魅力です。

ビトリマー性材料の特徴とアイロンでの再接着・シート応用の図解

研究2|分解可能なビニルポリマーの開発

ビニルポリマーはモノマーの種類が豊富で、共重合による機能調整や、光硬化によるその場合成が可能な魅力をもつ高分子です。しかしながら、主鎖が安定な炭素骨格で構成されているために、一般に分解が困難で、サステイナビリティの確保が課題になっています。当研究室では官能基の相乗効果を利用し、分解可能なビニルポリマーを開発して、この問題の解決に挑みます。

(1)UV硬化性解体性接着剤の開発

ラジカル開環重合を利用して主鎖にエステル結合を導入すると、アクリルポリマーに分解性を付与することができます。しかしながら、エステル結合は側鎖にも含まれるため、主鎖のみを選択的に切断することは容易ではありません.弊研究室では、側鎖にアルコール(源)をもつアクリルモノマーを併用し、側鎖-主鎖間のエステル交換反応を効果的に引き出すことで、主鎖のみを分解する技術を実現しました。さらに、この思想を応用し、解体性を付与したUV硬化型接着剤を開発しています。

UV硬化型解体性接着剤の硬化と解体メカニズム

(2)メタクリル樹脂のケミカルリサイクル

メタクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル、PMMA)は、アクリルガラスとして広く活用されています。弊研究室では、側鎖の一部をトリフェニルメチル基で置換した変性メタクリル樹脂が、優れたリサイクル性を示すことを見出しました。この樹脂は未変性樹脂と光学的、力学的性質がほとんど変わりませんが、270度に加熱すると、容易に解重合してモノマーを再生します。

変性メタクリル樹脂の加熱による解重合とモノマー再生スキーム

(3)新しい循環型ビニルポリマーの提案

弊研究室では、ケミカルリサイクルを前提とした、新しいビニルポリマーも提案しています。例えば、アセチルサリチル酸(通称:アスピリン)を原料に誘導されるビニルポリマーは、酸や塩基による加水分解により、サリチル酸を再生します。同様に、加水分解を契機に解重合する、環状スチレン誘導体も報告しています。

アスピリンを原料とした循環型ビニルポリマーの概念図

産学連携実績

弊研究室では、共同研究・技術相談・学術指導など、様々な形態で産学連携を進めています。弊研究室の成果を発展させた応用研究や、開発したモノマーの工業化を目指す事業化検討、企業様が抱える課題に沿って解決策を提示するコンサルティングなど、ご要望に応じた柔軟な対応が可能です。
ご希望に応じて、成果物の論文発表も進めています。下記に、近年の事例を記載します。

産学連携事例1:イハラニッケイ化学工業株式会社との高純度イタコン酸ジクロリドの開発
産学連携事例2:大阪ガスケミカル株式会社とのフルオレン含有アクリルモノマーの開発
産学連携事例3:綜研化学株式会社との非腐食性アクリル系粘着剤の開発
産学連携事例4:セイコーエプソン株式会社とのインク用高分子分散剤の開発