次に、自分の顔を鏡で見てみましょう。
これは、あなたの顔が、あなたが育った環境に適応したためではないか、と考えることができます。
近年、昔に比べてやわらかいものを食べる機会が多くなり、
昔の人よりもアゴが細くなったと言われています。
また、未来人の顔面予測が報道されましたが、現代人よりさらに細いアゴをしていました。
ほんとうでしょうか?
そこで私達はヒトの下顎骨に着目し、下顎骨に加わる応力状態を有限要素解析によって求め、下顎骨のかたちと力学状態の関係を調べています。
2. 個体別モデリング
そこで、近年発達してきたX線CT画像のような3次元医用画像から自動的に個体別の解析モデルを構築するシステムを開発しました。
健常成人男性の下顎骨をモデリングしたものが下図となります。
3. 力学条件の設定
食べ物を噛みしめるために口を閉じる場合について考えてみましょう。
ここで、咬合力は測定することができますが、筋力を正確に測定することはできません。
4. 解析結果
骨密度が高くなれば強度もあがるので、応力分布と骨密度分布には関係がありそうですが、現在はまだよくわかっていません。
(初稿 2002年4月 小関道彦)
1. はじめに
あなたのまわりにいる人の顔をしげしげと見てみましょう。
あなたと同じ顔をしていますか?
お父さんとお母さんの顔を足して2で割ったらあなたの顔になりますか?
なかにはそういう方もいらっしゃるかもしれません。
でもどこか違うところがあるのではないでしょうか。
特に骨の場合には、栄養状態などに加え、それぞれの骨に加わる力学状態が骨の形状や構造に影響を与えていると考えられています。
上述のように、ヒトの下顎骨の形状は様々です。
がっちりしたアゴの人もいれば、未来人のように細いアゴの人もいます。
そのため、平均的な下顎骨形状を1つモデル化して解析を行っただけでは、下顎骨のかたちと力学状態の関係を評価するには十分ではないと思われます。
この手法を用いることによって、複数のスライス画像があれば下顎骨以外の骨体もモデリングすることができます。
歯の部分をモデル化していませんが、複雑な下顎骨形状が滑らかに再現できていることがわかります。
骨には多数の筋肉が付着しており、それらが微妙なバランスをとりながら力を発生することによって、私達は体を動かしています。
この運動(咀嚼運動)は下顎骨と頭蓋骨に付着する咀嚼筋と呼ばれる4つの筋肉によって実現されています。
咀嚼時の応力解析を行うためには、これらの筋力と歯牙に加わる荷重(咬合力)を解析モデルに設定します。
そのため、筋力と咬合力によって発生するモーメントがゼロになるように、バランスをとって設定します。
食べ物を噛んでいる状態を想定した有限要素解析を行い、下図左のような結果が得られました。
部位によって応力の高いところ、低いところがあることがわかります。
下図右は解析した人の骨密度(骨に含まれるカルシウムなどのミネラル量)の分布を示したものです。
皆さんはこの結果を見てどう思われますか?
(改訂 2009年4月 小関道彦)